ぼくはどこにいる

8/9
前へ
/9ページ
次へ
 僕をのせた電車は動き出した。なぜか彼女は僕を見送ってくれた。  遠く離れてしまった駅を見ると、彼女は当然のことながらもういない。駅の構外で彼女らしき姿を見つけ、僕は唇だけでばいばいとつぶやいた。きっともう会うことはないだろう。  僕は消える。みんなの前から。そして一年経てば、もう、僕は誰にも思い出されることはないだろう。  誰かの心に僕がいなくてもかまわなかった。僕は消える。みんなの前から。ずっとこれを望んでいた。それが実現するとき、僕は自由になる。そして僕は自由になった。  だから遠いところまで行く。行けるかぎりの遠くへ。誰も僕を知る人がいない遠くへ。  誰かの中に僕がいなくてもかまわなかった。僕がここにいることは僕が知っている。それだけでよかった。十分だった。  Even if nobody knows where I am,     ――I am here!        ぼくはここにいるよ! (w200604) (20080405/20100523)  
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加