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「それ噛まれたの?」
「あ、うん。でもたいしたことないし、」
「そうゆう判断は勝手にやんないで。常識で計れないんだから。」
「すいません…」
「わかればよろし。見せて?」
庇う様にしていた右腕を上げさせると手の甲に割と広範囲の引っかき傷があり血が滲んでいる。
「早く塞いだ方がいいよ。」
「あ、そっか。」
言うなりカバンに無事な方の手を突っ込んで、取り出したのは『白の書』。
「確か……、コレに、」
「おやまあ。ばっちり予習できてるんですね。」
「ひと通り目は通したよ。俺のレベルで使える魔法なんて知れてるけどな。」
「十分でしょ。まだ始まったばかりだし。」
「ん。そうだよな…。」
「なによ不安そうな顔しちゃって」
「いやだってさぁ…」
もごもごと口籠もる愁さん。
先を促そうと口を開きかけたそのとき。
「しゅうちゃあああん!!」
早い早い。声が聞こえたかと思えばすぐに隣に並んだ。
「練習は?」
「したけどさー、なんか寂しくなっちゃって。」てへっと笑う。
「あれ、しゅーちゃんこれどしたの?いたそ~」
「実践、してみる?」
愁ちゃんの手を取ってマジマジと見つめる藍那さんに提案。
「うん!やってみる~!」
なんだ。やれば出来るんじゃん。分かってるけどね、十分頼りになるって事は。
みるみる塞がっていく傷口を眺めながらそんなことを思った。
「それにしても、藍那さんよくここが分かりましたね。」
「うん、リーダーがこっちって」
「なんだ、タヌキか」
「寝たフリってこと?ほんとに寝てたと思うけどー」
「寝てる人とどうやって会話すんのよ。」
「いや、あのひとも常識で計れないからね」
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