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どう見ても人の体の様にしか見えないのだが、人間であればそこに当然あるべき、ある部分が見当たらないのだ。そのために彼は最初、それをマネキンではないかと思った。しかし、それはどう見ても本物の人間の体にしか見えなかった。
音村は少しだけ、ボートを動かしてみる。そして、存在しない部位を覗ける位置まで移動した。
「うえ」
彼は言葉にならない声を出した。そして、ボートの縁から池に向かって先ほど食べた朝食を吐き出してしまう。
その人物には首から上がなかったのだ。そして音村は、その生々しい切断面をはっきりと見てしまった。
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