1章 マイウイング

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8月9日(月) 今日もmoeからの書き込みはありません。 自分で行動しようと思い、マイウイングのメンバーについて、調査することにしました。 ――僕は、マイウイング専属の探偵です。 「モバイルキャッスル」にはマイページというものがあることを知りました。 マイページとは自分専用のページで、ここで自己紹介をしたり、日記を書いたりできるみたいです。 僕は、存在すら知らなかったので、マイページの編集をしていませんでした。 そのせいでしょう。 僕のマイページには、無機質なページに自己紹介もなく、白いパンツと白いシャツ姿の無表情の男の子がいるだけでした。 ……まるで、本物の僕みたいだと思いました。 まずは、moeのページに行きました。 一面、ピンクの背景です。 そこに、可愛いドレスを着た女の子が、緑の芝生の上でくるくると回っています。 そういえば、マイウイングにmoeが書き込んだ時、必ずこの女の子がいたのを思い出しました。 ……これが、moe。僕の胸が高鳴ります。 自己紹介には、「みんな、よろしくネ」とだけ書いてありました。 掲示板もたまにある挨拶程度で、ほとんど書き込みはありませんでした。 ――moeも、あまりマイページを活用していないことがわかりました。 次にマイウイングの管理人、Yoshi-kiのマイページに行きました。 真っ白な画面の中に、カジュアルな格好をしたYoshi-kiが立っています。 Yoshi-kiは日記を書いていました。 それは3ヶ月ほど前の日記です。 <Yoshi-ki>  悲しいことがありました。  死にたいくらい、悲しいことです。  でも、死にません。死ぬことはできません。  これからの人生の中で、やることを見つけました。 ……3ヶ月前、僕にも悲しいことがあった気がします。 でも、それが何か思い出せません。考えると、気持ちが悪くなりました。 続きは明日、調べます。
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