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この夜、『大和』艦内では至る所で宴会が開かれていた。最期の出撃を控えた兵士達は『死の直前』と言うことを忘れさせる程、賑やかに騒いだ…酒瓶片手に士官が下士官と肩を組んで『軍艦行進曲』や『同期の桜』を高らかに歌う無礼講もあちこちに見られた…
有賀「兵達は楽しく呑んどるようですな」
暗い艦橋で『大和』艦長の有賀幸作(あるがこうさく)大佐は呟いた
伊藤「我々も呑むか?」
第二艦隊司令長官の伊藤整一(いとうせいいち)中将が答えるように呟く。
有賀「いえ…私は後で」
と断り、軍服のポケットから煙草を取り出し、ラッタル(階段のこと)を上がって行った。
士官「艦長は相変わらずのヘビースモーカーですね」
伊藤「そうだな…それより、誰か酒保へ行って来てくれないか、私達も呑もうじゃないか」
士官「はっ!!」
二名の士官が答え、昇降機(エレベーター)で降りて行った…
酒保とは艦内売店のことであり、酒は勿論、菓子類や生活用品等が販売されている所だ、
二人の士官はそこで『月桂冠』の一升瓶を十本のケースで買い、再び狭い昇降機に入り、艦橋へ上がって行った。
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