咲かない花

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店を出て、俺たちは歩いていた。 「なにさっきのいい感じ?」 ヤケ買いと思われる肉マンを頬張りながら話しかけてくる。 すでに、3つ目だ。 「なんかあった?」 「なんで、そんなに他人に興味ないかな……、あぁ…。 俺もプリンにすれば良かったかな。」 結局、最初の問いのいい感じの意味も分からずに自分のビニール袋を覗き込む。 「…スプーン入ってない。」 ぴくん、と反応したつぼは嬉しそうな顔をし、持っていた肉マン達を俺に渡し、 「おれが貰ってきてやんよ!」 そう言って、スゴい勢いで走っていく。 すでに姿は見えなく、俺は手頃に座れそうな場所を見回すが 見つからず、電柱に寄り掛かる。 ここから距離はそれほど離れていないので、 つぼはすぐに帰ってきた……というより、 なんか逃げてきたっぽかった。 「彼女…バイトのシフト入ってた。」 「そ、 スプーン貰ってきた?」 「貰ってくるかよ、ちきしょー!」 「えぇー!?」と、思ったが口にはしなかった。 多分だけど、 あの店長がレジに立っていたんだろうから。 プリンは家で食う事にし、 すぐに、つぼとは別れる場所につく。 別れ際に、どすの利いた悪口が聞こえた気がしたが、もう忘れた。 家に着き、扉を開けようとしたら鍵が掛かっていた。 財布から鍵を取り出して、差し込む。 ひねろうとしたとこで、違和感に気付く。 中から鍵を押さえられている違和感…と、いうより押さえれている。 指先に力を込めるが、それ以上の力で押さえつけられていたので諦め、 ドアに向かって話しかける。 「…なに?」 「なんで携帯でないの~?」 ドア越しから、噂の姉貴です。 「今日携帯とられ…「嘘だ。」 否定が早過ぎますよ、お姉様。 「反省するまで、家に入れませんからね。」 おいおい…、 そう思って自分の腕に掛かったビニール袋を見る。 「プリンあるよ。」 その瞬間にドアが開く。 「おかえり。」 満面の笑みで迎えられる。 その笑顔から目を逸らして、「はいはい」と流しながら、家に入る。 直視するには 今の俺には少し……、 ため息を吐きながら、先程の一週間を思い出してしまった。
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