咲かない花

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風で揺らめくカーテンが、陽光を部屋に取り入れる。 静かに瞼を開ける。 「いつの間に…?」 頭の中で思いだそうとする。 昨日の晩メシ食べて……、そこから覚えていない。 多分そこで寝てしまったのだろう。 机に置いてある目覚まし時計を見る。 7時。 ベッドから飛び降り、キッチンに向かう。 「ん、おはよ。」 姉貴が弁当を作っている。 「うわっ、ごめん。」 「いいの、いいの、私得するし。」 そう言って、キッチンの壁にかけられたカレンダーを見る。 そこの日付の余白に、自分達の名前が交互に書かれていて 6月の初めの日付一週間分、すでに線をひかれている。 「はぁ。」 この線が意味する事。 普段は一日おきに料理をするのが俺らだが、 このように寝坊したり、サボったりすると 一週間全てやらなければならなくなる。 「ひろ、昨日ご飯食べてすぐ寝て風呂も入ってなかったでしょ? だから、チャンスだと思って。」 ニシシと、笑う姉貴。 姉貴の言葉で、自分がすぐ寝てしまった事が分かった。 何か他にあった気がするが忘れた。 頭をかく。 「じゃあ、シャワーするよ。」 そう言って、浴室に消える弟を横目で見送り、 フライパンの上で焼かれている卵焼きを少しずつ丸めていく。 「なんてゆうか… うーん…、 優しいんだよね~。」 自分が寝坊した日は、笑って許してくれる弟。 しかし自分は、そうはしないから、優しいと思ってしまう。 昨日今日は、それしかないが、もっと優しい一面が沢山ある。 昔は可愛くて、優しかった。 今でも、そうだけど…。 もっと、可愛かった。 今は少し不器用で、少しカッコいい。 だからいじめたくなるし、甘えたりしたくなる。 昨日の出来事を隠す事がどちらなのかは、わからない。 そこで、頭を変な言葉がよぎる。 学校でも、女に対して優しいのかな? 可愛い弟への、姉のつまらない感情でしかないから考えるのを辞める。 でもやっぱり、何処か知らない女になびく弟は見たくない。 でも、あの優しい弟をもっとみて欲しいとも思う。 すごく矛盾してる。 分かってる。 自分が弟を……。 「シャンプーなぁーい~。 新しいのとって~~。」 浴室から聞こえてくる弟の声。 昨日確かに、自分が全部使った。 「はいはい、今行くよー。」 火を止めて、浴室に向かう。 ちょっとしたハプニングを期待しながら………。
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