52人が本棚に入れています
本棚に追加
風で揺らめくカーテンが、陽光を部屋に取り入れる。
静かに瞼を開ける。
「いつの間に…?」
頭の中で思いだそうとする。
昨日の晩メシ食べて……、そこから覚えていない。
多分そこで寝てしまったのだろう。
机に置いてある目覚まし時計を見る。
7時。
ベッドから飛び降り、キッチンに向かう。
「ん、おはよ。」
姉貴が弁当を作っている。
「うわっ、ごめん。」
「いいの、いいの、私得するし。」
そう言って、キッチンの壁にかけられたカレンダーを見る。
そこの日付の余白に、自分達の名前が交互に書かれていて
6月の初めの日付一週間分、すでに線をひかれている。
「はぁ。」
この線が意味する事。
普段は一日おきに料理をするのが俺らだが、
このように寝坊したり、サボったりすると
一週間全てやらなければならなくなる。
「ひろ、昨日ご飯食べてすぐ寝て風呂も入ってなかったでしょ?
だから、チャンスだと思って。」
ニシシと、笑う姉貴。
姉貴の言葉で、自分がすぐ寝てしまった事が分かった。
何か他にあった気がするが忘れた。
頭をかく。
「じゃあ、シャワーするよ。」
そう言って、浴室に消える弟を横目で見送り、
フライパンの上で焼かれている卵焼きを少しずつ丸めていく。
「なんてゆうか…
うーん…、
優しいんだよね~。」
自分が寝坊した日は、笑って許してくれる弟。
しかし自分は、そうはしないから、優しいと思ってしまう。
昨日今日は、それしかないが、もっと優しい一面が沢山ある。
昔は可愛くて、優しかった。
今でも、そうだけど…。
もっと、可愛かった。
今は少し不器用で、少しカッコいい。
だからいじめたくなるし、甘えたりしたくなる。
昨日の出来事を隠す事がどちらなのかは、わからない。
そこで、頭を変な言葉がよぎる。
学校でも、女に対して優しいのかな?
可愛い弟への、姉のつまらない感情でしかないから考えるのを辞める。
でもやっぱり、何処か知らない女になびく弟は見たくない。
でも、あの優しい弟をもっとみて欲しいとも思う。
すごく矛盾してる。
分かってる。
自分が弟を……。
「シャンプーなぁーい~。
新しいのとって~~。」
浴室から聞こえてくる弟の声。
昨日確かに、自分が全部使った。
「はいはい、今行くよー。」
火を止めて、浴室に向かう。
ちょっとしたハプニングを期待しながら………。
最初のコメントを投稿しよう!