52人が本棚に入れています
本棚に追加
長い間走っていた。
自分の中で、足を止めようとする感覚が強くなる。
今止まれば、確実に遅刻する、
その事実が、私を走らせていた。
駅に着き、切符を買い改札口に通した時、
「間も無く、列車が…「やばい!」
ホームにむけ、一気に階段をかけ降りる。
ピィ~
発車前の車掌の笛がなる。
一番下に着き、バランスを崩しそうになるが、踏ん張って、一番近くで半開きになっているドアに駆け込む。
背中がドアを通り過ぎたと同時にドアが閉じる。
「ハァ…ハァ…。」
額の汗を拭い、息を整えながら顔をあげる。
周りはやはりとゆうか、注目している。
(うぅ…。)
その時、列車が動き出す。
慣性の法則に逆らえず、
横にいる人にぶつかってしまう。
「す、すいません。」
「あ、いえ…女性車両はあっちですよ?」
「えっ!?」
そう言われて、顔をあげると男の人しかいない。
(あぅ…。)
ぶつかってしまった方に頭を下げ、狭い車内を進もうとする。
この時、自分を恨んでしまう。
どうしても、男の人に胸がぶつかってしまう。
(望んで大きくなったわけじゃないのに…。)
「おい」
「は、はい?」
突然話しかけられ、声が裏返る。
「さっきから見てたらよ…
男共にデケェ胸押しつけまくって、欲求不満か?」
「そ、そんなつもりじゃ…。」
そう言ってる途中に胸を鷲掴みされる。
「キャッ!」
「俺が、揉んでやるよ。」
「や、辞めて下…。」
今度は後ろから、
「ヒャッ!?」
「おいおい、胸おしつけただけでこっちはこんなに…へへ。」
パンツの中に手を入れられ指を差し込まれる。
「ち、違いますっ!
さっきまで、走って…。」
(だ、誰か!)
助けを求めようと周りを見渡す。
「えっ!?」
男の人達が皆、下半身を露わにしてこちらを見ている。
「お嬢ちゃんが望んできたんだよ~」
「おい、尻もベトベトだぜ。」
「減るもんじゃないだろ?」
自分の了承のないまま話しが進む。
(だ、誰か!!!)
顔の向きを変えた時、
車掌がこちらをみているのに気付く。
「た、助けて!」
「間もなく、せいえき、せいえき。」
「キャッ!」
両目に何か熱いモノがとんできた。
それを指で拭って目をあける。
そこには見慣れた天井がある。
「ゆ、夢!?」
「あぅ…。」
安堵と疲れで、枕に顔をうずくませた。
最初のコメントを投稿しよう!