擦り切れた記憶

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長い間走っていた。 自分の中で、足を止めようとする感覚が強くなる。 今止まれば、確実に遅刻する、 その事実が、私を走らせていた。 駅に着き、切符を買い改札口に通した時、 「間も無く、列車が…「やばい!」 ホームにむけ、一気に階段をかけ降りる。 ピィ~ 発車前の車掌の笛がなる。 一番下に着き、バランスを崩しそうになるが、踏ん張って、一番近くで半開きになっているドアに駆け込む。 背中がドアを通り過ぎたと同時にドアが閉じる。 「ハァ…ハァ…。」 額の汗を拭い、息を整えながら顔をあげる。 周りはやはりとゆうか、注目している。 (うぅ…。) その時、列車が動き出す。 慣性の法則に逆らえず、 横にいる人にぶつかってしまう。 「す、すいません。」 「あ、いえ…女性車両はあっちですよ?」 「えっ!?」 そう言われて、顔をあげると男の人しかいない。 (あぅ…。) ぶつかってしまった方に頭を下げ、狭い車内を進もうとする。 この時、自分を恨んでしまう。 どうしても、男の人に胸がぶつかってしまう。 (望んで大きくなったわけじゃないのに…。) 「おい」 「は、はい?」 突然話しかけられ、声が裏返る。 「さっきから見てたらよ… 男共にデケェ胸押しつけまくって、欲求不満か?」 「そ、そんなつもりじゃ…。」 そう言ってる途中に胸を鷲掴みされる。 「キャッ!」 「俺が、揉んでやるよ。」 「や、辞めて下…。」 今度は後ろから、 「ヒャッ!?」 「おいおい、胸おしつけただけでこっちはこんなに…へへ。」 パンツの中に手を入れられ指を差し込まれる。 「ち、違いますっ! さっきまで、走って…。」 (だ、誰か!) 助けを求めようと周りを見渡す。 「えっ!?」 男の人達が皆、下半身を露わにしてこちらを見ている。 「お嬢ちゃんが望んできたんだよ~」 「おい、尻もベトベトだぜ。」 「減るもんじゃないだろ?」 自分の了承のないまま話しが進む。 (だ、誰か!!!) 顔の向きを変えた時、 車掌がこちらをみているのに気付く。 「た、助けて!」 「間もなく、せいえき、せいえき。」 「キャッ!」 両目に何か熱いモノがとんできた。 それを指で拭って目をあける。 そこには見慣れた天井がある。 「ゆ、夢!?」 「あぅ…。」 安堵と疲れで、枕に顔をうずくませた。
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