擦り切れた記憶

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昨日、確かに先生は忘れたら罰ゲームがあると宣言していた。 自分で集めてるから、間違いない。 私以外皆、しっかりやってきていた。 正確に言えばあと一人いる。 私の斜め後ろの彼。 しかし、まだ来ていない。 女子から人気はあるが、女子と話しているところをみた事がない。 その理由としては、やはり真後ろの彼が原因だろう。 チャイムが鳴る5分前、 「…融ける。」 軽くふらつきながら、教室に入ってきた。 自分の机の上にカバンを置いて、窓から顔を出す。 その姿を見て、はしゃぐ女子達がいるが彼は気付かない。 「よっ」 そこに真後ろの席の彼が声をかけると、周りの女子は邪魔臭そうにするが それにも、彼等は気付かない。 私は、宿題を受け取る為に彼に近付こうとしたが、変な会話が始まったので辞める。 「今朝な、風呂上がりをのぞ…「姉ちゃんの!?」 「いや、その逆…。」 「あー…つまり、覗かれた?」 「そうそう、 でさ…姉貴に「隠せー」とか言われながら、物投げられたのが急所に当たってさ…。」 「で、フラフラと?」 「もう、ダメかも。」 そんな会話を始めたから、中々行きづらい。 「あ、そいえばアレの発表は明日の夜らしいぜ?」 「…あれ?」 「テクノロイド。」 「忘れてた、つうか興味ねぇ。」 そろそろ時間もないので、私も思い切って彼の所に行く。 「あ、あのね…。」 「ん?」 2人が一斉にコチラを見る。 (あぅ…) 「ひろと、英語の宿題だよ。」 「ん、あぁ。 やってないや。」 彼は頭をかきながら言った。 「マジ? お前、翔ちゃんの罰ゲームはガチだぞ?」 「裸でグランド一周とかか?」 (…裸っ!?) そこで、SHR開始のチャイムが鳴る。 「うーん、したら何か言い訳するからツボ。」 「ん?」 「フォローよろしく。」 「らじゃ。」 2人のやりとりに、私はその間で 交互に二人の顔を見ることしか出来なかった。
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