逆 鱗

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跋難陀は哉から気をそらさせるため、速攻で懐に入り込み先制を決めようとする。 「くっ・・!」 だがそれよりも速く尾が振り抜かれ、辛うじて防ぎはしたがとんでもない衝撃で宙に浮かされる。 「しまった!?」 眼前へと迫る通力を纏った応竜の翼。宙にいては回避も出来ない。 「この・・・っ!」 腕を前で交差させ全力で障壁を築き、足元の地面を隆起させ足場にして真正面から受け止める。 「ほう?」 その潔さに感心したのか、応竜は笑みを浮かべて翼を振り落とす。 「この・・・!馬鹿、力!!」 受け止めはしたものの、急造の足元は砕け地面は大きく陥没していた。 あまりの衝撃で腕と足がまともに動かせない。 「脆い」 一撃で無力化した事を確認すると、応竜は先ほどからちょろちょろ動いている哉へ狙いを変える。 (化け物が・・・!華龍が一撃だと!?) 冗談じゃなかった。力任せの一撃で華龍が行動不能になるなんて。 出鱈目過ぎる力だ。だが、なまじ強すぎるため捻りのない攻撃しかないのが敗因だ。 「来ないのなら、我から攻めようぞ。いや、それが狙いであろう?」 こちらの狙いに見当を付けながらも自ら嵌りに行こうとする。 こちらを見下した行動。それに加え、あえて己を逆境に置き命の瀬戸際、その高揚感を味わいたかった。 そしてこの状況を打開する策があるのなら見たかった。 「なら、容赦はしない・・・!」 哉は動きを止め突進してくる巨体を正面から見据える。 「其は竜を屠る劫火の鎖!焔牢!」 右手で刀印を構え一文字に切る。 瞬間、地面から真紅の炎が噴き出し鎖のように応竜に絡みつく。 「なんだと!?」 寸前、応竜は障壁を築き直撃は避けた。しかしいくら力を注いで障壁を強固にしようとも哉には意味はなかった。 「その程度で俺の炎を防ぐ事は出来んさ。それで焼き殺してもいいんだがな、貴様には生き地獄を味わってもらわなければこの留飲は下がらん・・・!!」 哉は何も無意味に動き回っている訳ではなかった。 短剣で地面に印を刻みこれを発動させるために力を込めていた。 跋難陀にはそれを終えるまで時間稼ぎをしてもらった。 この地でなければこのような前準備はいらなかったのだが。
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