逆 鱗

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「させぬよ、出来そこない」 「女禍!?」 全てを焼き尽くすはずの炎の中に平然と佇むのは、応竜の主の女禍だった。 「応竜、主、この程度の炎も防げんのか?」 応竜と己を守る結界を展開しながら何事もないように僕に話しかける。 「も、申し、訳な、い・・・」 もはや満身創痍。生きているのが不思議なほどの火傷。応竜の身体の至る所が炭化していた。 (・・・って、ちょっと待って。哉の炎で炭化で済んでるの!?) 跋難陀の顔が驚愕に彩られる。 哉の炎を受けた相手は例外なく燃え尽きた。炎の欠片が当たっただけでも全て焼き尽くされた。 哉の、迦具土の炎はこの世の全てを焼き尽くす、騰蛇以上の、いや正真正銘地獄の業火。その炎は神すら焼き殺す。 それを受けて炭化で済んでいる。これはおかしい。あり得ない事だった。 「出来そこないの迦具土。主の力が完全ならば応竜を焼き殺す事は愚か、妾も殺せよう。残念だったな」 女禍の言葉に哉が歯をかみしめる。苦渋と悔しさ、憎悪に満ちた目で女禍を睨み殺すように見ていた。 「なんじゃ?ここで妾とやるつもりか?来るなら喜んで受けて立とう」 今すぐにでも焼き殺したい。それが本音だが、あの炎の中を平然と佇む化け物相手に勝機はなかった。 己の中の葛藤を押し殺し、それ以上の気迫で殺気を内に押し込める。 女禍としても今この場でやる気はないだろう。もしそうなら既に仕掛けてきているはずだ。 「賢明、じゃな。妾としても不甲斐ない僕を治療せんといかんからな」 「・・・・」 喋る気力もない応竜の炭化していた部分が所々崩れ落ち、最もひどい右前肢は既に真中から足が無かった。 「早いうちに片割れを見つける事じゃな、出来そこないよ」 「この野郎!!」 もはや我慢の限界に達した哉が全力で炎を放つ。が、それも女禍には届かず当たる直前で応竜と姿を消す。 「助かった・・・」 「・・・」 もし戦いになったら負けは確実だった。哉の炎を退ける女禍の力はそこが見えない。 「・・・哉?」 哉の様子がおかしい。女禍が消えた方向を見つめたまま微動だにしない。 「・・・・・ごふっ」 「・・・え?」 哉の口から赤いものが零れる。それも何度も零れ、地面に倒れた哉の顔の周りは赤い池のようになっていた。 「哉!?」
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