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阿那婆達多と娑迦羅が背を合わせながら驚愕の声をあげ、周りも驚愕に彩られていた。
一匹だけでも手こずった相手。それがざっと見で二十はいる。万事休すだ。
(解くしかないか・・・)
紅蓮と難陀がそれぞれ封印を示すものに手を当て、覚悟を決める。
(そうか、これって・・・!)
何かに気付いた昌浩が口の中で言葉を紡いでいく。
「勾」
「阿那婆達多」
『後は任せた』
覚悟を決めた紅蓮は金冠に、難陀は左目にかけられた封印を振りほどく。
「待て、二人とも」
解かれる瞬間六合がそれを止めた。
唯一かもしれない打開策を止められ、二人は六合を睨むが彼は昌浩を見ているだけだった。
「・・・よ・・自在を・・えるものよ、輝ける・・ものよ・・」
声が小さくはっきり聞き取れないが、紅蓮には聞き覚えがある神呪だった。これは―
「神呪が完成するまで昌浩を守るぞ」
昌浩の意図を瞬時に読んだ紅蓮が全員に号令する。他の者たちも瞬時に悟り、昌浩の守護に専念する。
神呪が完成するのは時間はかからない。その間だけ持ちこたえればよかった。
(あの土竜達から感じる気配と高淤の神の封印の気配は同じなんだ。だったら・・・!)
高淤の神の封印がある限りあの土竜達は永遠に出現する。ならばその源を立てばいい。
あの時みたいに封印を解き高淤の神を解放すれば。
「あまねき諸仏に帰依したてまつる、除災の星宿に」
昌浩に向かっていた礫は徳娑迦と勾陣がたたき落とす。
地面からの槍は娑迦羅が昌浩を宙に浮かし全て躱させる。
宙に浮かされても昌浩は全く動じず、昌浩を中心に凄絶な神気が集まる中神呪を唱え続ける。
身体の前で刀印ではなく不動の秘印を結んだ。
「東方降三世夜叉明王、西方大威徳夜叉明王、南方軍多利夜叉明王、北方金剛夜叉明王」
昌浩が放つ凄絶な神気と威圧に畏怖し、昌浩潰さんと土竜達が巨大な岩塊を召還しこちらを叩き潰そうとする。
山が降ってくる。そう思うほどの巨大な岩塊達。それに紅蓮と難陀が微動だにせず、それぞれ封印に手をかける。
『はあぁぁぁぁぁ!!』
金冠を投げ捨てた紅蓮が、左目が青い瞳から漆黒の瞳になった難陀が全力で通力を爆裂させる。
甚大な通力の前に岩塊は全て粉々に砕けちり、細かい破片は紅蓮に焼き尽くされる。
岩塊を召還していなかった一匹が礫を昌浩に吐く。が、それは阿那婆達多の結界に全て弾かれる。
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