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「圧伏せよ!浄めたまえ、摧破したまえ!呪縛の鎖を打ち砕き、出でよ・・・!」
昌浩に集中していた神気が爆発しそうなほどに膨れ上がる。
「高淤の神!!」
そのひと言で貴船の封印が解け、高淤の神の力の全てが昌浩を中心に解き放たれる。
それは全てを呑みこみ土竜達に刹那の抵抗すら許さず、その姿を消し去っていく。
「はぁ・・・はぁ・・・」
あの時よりも強力な封印に、昌浩は精も魂も使い果たしその場に崩れ落ちる。
「昌浩!!」
地面に激突する寸前、紅蓮が抱きとめゆっくりと抱え上げる。
「大丈夫か?」
「う、うん・・・。なんとか」
「そうか。立てるか?」
「たぶん、まだ無理かも・・・」
苦笑いしながら昌浩は紅蓮の腕の中に身体を預ける。
「早く戻さないか、たわけ」
「おわっ」
勾陣が昌浩が倒れそうにになり焦った紅蓮に金冠を乱暴に頭に嵌める。
その傍らで六合はやれやれといった風情で眺めていた。
「なるほど。後継と言われるだけはある」
「あの子、将来性で言ったら今代どころか今までで一番かもよ?」
「ああ、そうだな。そう遠くない内、晴明を抜きかねないな」
「後はいろんなものに潰されない事を祈るばかりだな」
難陀、娑迦羅、阿那婆達多、徳叉迦が今見た事を話しあい、昌浩の評価を内で改めていた。
今はまだ完成には程遠い。経験で言えば哉と晴明に遠く及ばない。技術もそうだ。しかし、将来性という一点においては他の追随を許さない。
至高の宝石の原石。今の昌浩はこの表現があっているかもしれない。
『ほう、再び我を解き放ったのはお前か、安倍の子よ』
昌浩達の上空、龍の姿をとった高淤の神が彼らを見下ろしていた。
「あ、は」
「こう何度も封じられては神の威厳が無いな、貴船の祭神よ」
昌浩の言葉を遮り紅蓮が慇懃極まりない口調で言いのける。
その言葉に昌浩達は肝を急速に冷やすが、それと反対に難陀たちは微かに笑っていた。
「そうだな、高淤よ。神としてのありがたみに欠けるな」
「ま、俺達には関係ないが」
徳叉迦と阿那婆達多がたたみかけるも、高淤の神は表情を変えず難陀を見下ろしていた。
「この二人の無礼は詫びよう。だが、それではない様子だな。如何した高淤の神よ」
『・・・あのたわけはこの地で力を使ったようだな。お前たち、この意味がわからない訳ではあるまい』
『!?』
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