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空っぽの器が魂を形成し、無力な魂が器を形成し、消滅の道を免れ二つの存在が生まれた。
迦具土は確かに死んだ。しかしその魂と肉体は全く異なる存在になる事で生きながらえた。
その魂を持つのが哉。迦具土であって迦具土とは異なる存在。
「故にこの炎は存在している。そして私もここにいる」
迦具土は死んだのだから高淤の神が生まれた。
迦具土は死んでいないのだから炎は存在している。
相反し矛盾する出来事が噛み合い、奇跡みたいな均衡を保ち世界は存在していた。
あまりに、というよりも予想も出来ない事を話され昌浩達の理解が追いつかず、混乱しきっていた。
「面白い奴だよ、哉は。迦具土の魂を持ち忌むべき存在なのに、その心は人であろうとする。本当に愉快な奴さ」
禁忌の神であるくせに誰もよりも人らしい心を持ち、曲げられない想いがある炎の死神。
これほど面白い奴はそうはいない。この子どもと同じ位に面白い奴だ。
「お前達が知りがっていた哉の事は話した。理解は出来たか?」
いや、そんな早く出来る訳ないって。
という突っ込みは全員内心に押しとどめ曖昧に頷く。
哉は迦具土の魂を持つ、迦具土とも全く違うとも言える存在。簡単に纏めるとこんな感じだろうか。
(あれ・・・?)
考えを必死に纏めようとしていた昌浩が何かに気付いた。
「高淤の神、ひとついいですか?」
「なんだ?」
「迦具土の魂から生まれた存在が哉。では、肉体の方はどうなったのですか?」
高淤の口から哉については語られたが、片割れの、肉体の話しはされなかった。
「あ奴か・・・。近いうち、会うだろう」
魂と肉体は引かれ合う。今までは二人とも意識的に避けてきたが、今回はそうはいかないだろう。
「私からもよろしいか」
昌浩の隣に並び立つように勾陣が前に腕を組みながら立つ。
「先ほどの口調から哉が迦具土としての力を使える事は伺えた。貴方はそれをこの地で使う事を危惧しているようにも見受けられた。一体どういう事だ?」
それを聞いた瞬間、難陀たちは顔色を変え飛び立っていった。緊急事態という事はよくわかるが、その理由がわからない。
「魂と肉体は一つであるからこそ本来の力を発揮する。本来とは違う肉体、ましてやあれの器は神のものではなく人のものだ」
関係ないだろうと思える話を急に始めた高淤に、勾陣は目をしかめる。
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