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「その状態で、人の身で余る力をこの地で使えばどうなる。あ奴はあれでも炎神だ」
人の身で余る力を使えば当然反動は凄まじい事になるだろう。
炎を司る者の極致にいる神が水を司る者の極致にいる神の土地で力を使う。それだけで反発を生む。
紅蓮のように強靭な肉体、精神力、神通力があれば何も問題はない。
だが、哉にはそれが無い。
「っ!?戻ろう!!高淤の神、俺たちは失礼します!」
結論にたどり着いた昌浩が駆けだし紅蓮達も後を追う。
(魂が消えれば肉体も長くはもたない。骸よ。お前はどうする?)
遠い地にいるであろう哉の片割れに高淤は内心語りかける。
その頃晴明は哉の事が気になり中々寝つけずにいた。
哉が空に消えた頃はまだ明るかった筈なのに、もう星が見えていた。
「哉たちなら平気だって、晴明」
「あの男に限って万が一という事はあるまい」
太陰と玄武が晴明の不安を少しで拭おうと言葉を欠けるが、あまり効果はなかった。
「そうなんだがな、だが不安が拭えないのだ」
「・・・!この風って・・・」
轟っ!
暴風とも言えるほどの突風が晴明の部屋の前に現れ、その中から現れたのは風神と跋難陀と、二人に支えられ意識のない哉だった。
「哉!?」
慌てて晴明が廊下に出て、風神と跋難陀がその隣に跳び移る。
「一体どうしたというのだ!?」
哉の身体はのどから下を中心に赤く染まり、身体の所々に赤い斑があった。
間違いなく吐血をしていた。それも、かなりの量だ。
「説明は後にさせてもらう。晴明、その腕を見込んで哉を救ってほしい」
風神の真剣な眼差しを正面から見据え、跋難陀の潤んだ眼差しを受け止める。
「・・・わかった。最善を尽くそう」
晴明にも必ず助けると、断言する事は出来なかった。
哉の身体ははた目から見ても生気、霊気がほぼ空になっていた。もはや治療ではなく蘇生の類いだ。
天一にやらせることも出来ない。万が一、朱雀が許したとして天一は間違いなく死ぬ。
「ひとまずそこに寝かせよう」
部屋の中に案内し、敷いてあった布団に哉を寝かせる。
哉の右に座り晴明は哉をじっくりと眺め、頬に軽く手を当てる。
(冷たい・・・。死者と大差ないではないか。それに、死なないのがおかしい程に生気も霊気もない・・・)
せめて最低限までは回復させなければ。
拍手を打ち晴明は全霊を込め快癒の呪いを唱え始める。
「止めた方がいいよ、安倍晴明」
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