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今の声が引き金になっていてもおかしくない程に、青龍達の神気は高まっていた。
物の怪は彰子が同じ屋敷にいる事も忘れ本性に戻り、勾陣と六合はそれぞれ得物を構える。
昌浩も刀印を構え見慣れない伸びた白髪の男を睨みつける。
「君が安倍晴明の後継か。まだまだ小さな子どもなんだねぇ」
この雰囲気とかけ離れた口調でしゃべり、昌浩を視界に収める白髪の男。
『!?』
昌浩と紅蓮達はその顔を見て驚いた。伸びた白髪。白い狩衣を除けば哉と瓜二つだった。
まさか。
「哉の・・・」
火之迦具土神の魂の本来の器である、火之迦具土神の肉体。哉の片割れか。
「今日は何なのよ」
「全くだ。どうして続けて現れる」
「骸、殺していいならすぐ済むわよ」
晴明たちを囲んでいる三者は昌浩達をも標的に定め、むき出しの殺気を叩きつけてくる。
(やるしかないか・・・)
晴明と昌浩が同時に思い、十二神将が力を貯めこんでいく。
「お前ら、さすがにやかましい。少し静かにしていろ」
小さいが力強い声が部屋に響き渡り、全員の視線がその声の方へと集中する。
「やぁ、哉。久しぶり」
「それより、そこの三人をどうにかしろ。最初からその気はないんだろう。その気にさせるな」
骸の挨拶を無視し、跋難陀に身体を支えられた哉は、彼にすら軽く殺気を向けてくる三人を沈めるよう、骸にきつく言う。
「そういう事。抑えて。月華(げっか)、雷虎(らいこ)、闇朧(えんる)」
骸が言うと先ほどまでの殺気が嘘のように霧散する。
月華と呼ばれた少女が骸の前に立ち、腰に手を当てなんだか偉そうに立っている。
雷虎と呼ばれた男が骸の右に控え、闇朧と呼ばれた女性が左に控える。
それを確認すると哉は晴明に目を向け、その意図を読んだ晴明は青龍達に抑えるよう言い、昌浩も晴明に倣い紅蓮達を抑えさせる。
「ようやくお目覚め?哉」
「やかましいぞ、月讀。少し黙ってろ」
さすがに不機嫌だろう哉がそれを隠そうともせず少女、月讀―晴明たちはその名前に驚愕し固まっている―に言い捨てる。
「黙ってろとは失礼ね!叩き潰すわよ!」
「やれるのならやってみろ」
「表に出なさい!」
「断る。一人で出て遊んでろ」
「子ども扱いするな!!」
尚もなんかわめいている月讀を無視し骸へと視線を向けると、なんだか笑いを堪えていた。
「月華を子ども扱いして無事に済むなんて、私以外では君くらいだよ。哉」
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