想 人

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雷虎。その本当の名は建御雷之男神。武神とも軍神とも称され、布都御魂と呼ばれる神剣を操る神である。 彼も高淤と同様、伊弉諾が十拳剣で迦具土を切り殺した際に生まれた神だ。 御雷という名は、建御雷之男神という名をいちいち呼ぶのがめんどくさいという理由で月讀が付けた名である。 彼のも天津神としての矜持があり、己の名に誇りを持っている。が、月讀の神格は自分よりも遥かに上だ。逆らう事は出来なかった。 ここから御雷という名前が広がり、今では骸を除く彼と親しい者は全員御雷と呼んでいた。 「ところで、安倍の者どもが呆気に取られているな」 闇朧がざっと見渡して言う。確かに、十二神将に安倍晴明に昌浩は呆気に取られていた。 特に昌浩は呆気というか、今までの会話を聞いていたかも怪しい。 「晴明、十二神将、それに後継。俺の声は聞こえているか?」 いい加減そろそろ骸達の説明でも始めてやろうかと哉が行動に移す前に、聞こえているか念のため確認する。 「あ、ああ・・・。すまん、話が大きすぎて、な・・・」 「ま~、無理もない。細かい事情は省くが説明するぞ」 平常心を取り戻した晴明に十二神将だが、昌浩が取り戻すのはまだかかりそうだが、哉は気にせず続けた。 「あの馬鹿っぽい小娘が月讀命だ。さすがに知っているだろう」 「誰が馬鹿っぽい小娘よ!?」 「抑えて抑えて」 腕の中で暴れ出した月讀を骸が必死で抑えつける。 三貴子相手にここまで言えるのは世界広しといえど、哉しかいないだろう。 一方晴明たちには、実物を見た事が無く話しに聞いていただけの存在だ。 女性であると言う事は知っていたが、まさかこのような少女だとは思ってもいなかった。 いや、神の姿も人間同様千差万別。十二神将が最も身近な例だろう。 「んで、そこのが建御雷之男神。こっちも知ってるだろ」 その名も知っている。迦具土が死した際、その血が岩に当たり生まれたという 同じ時に生まれた高淤の神、闇御津羽神らとともに三神の一柱を担っている神である。 「そっちの説明は、お前でもよくわからんだろうから割愛」 割愛された闇朧はどうでもよさそうに骸の傍らで外を眺めていた。 闇朧。それは骸に与えられた名で、本来は黒龍と呼ばれるものである。 大陸に存在する四龍の一角を担うのが黒龍だ。人身でないその姿は文字通り漆黒の姿をしており、その姿故邪龍と言われる事もある。
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