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遠くで誰かが叫んでいるが、なんと云っているかは分からない。目の前にあるのは薄く金がかった茶色の髪と、赤銅色の鎧。その人物が驚愕の表情で振り返り――
(目が――合った……)
「リリアーヌ!!無事か!?」
怒号して駆け寄ってくる将軍に、流石に青ざめた顔で王は頷き返した。その頬は生々しい血で汚れていたが、それは彼女のものではなかった。
「はい……私は。そこの方が、庇って下さって……」
主君の指さした方を見て、下馬したシスターは目を剥いた。
「――おい。おい。嘘だろ!?」
倒れ絶命している兵士の顔に、彼女は見覚えがあった。
「何やってんだ!!馬鹿野郎!!」
「シスター」
王の制止も耳に入らず将軍は死んだその兵士に対しての悪罵を続けた。
「俺はこんなところで死なせるためにオメェを育てたわけじゃねェッ!!畜生っ、何やってんだ、この――」
彼女と交わした幾つもの会話を思い出しながら、シスターはガンと弓を手にしたまま馬の鞍を殴りつけた。
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