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親父が生きていた頃は、その右腕として数多の依頼を完璧に遂行していってたらしい。
特に狙撃の腕前は親父よりも上だったらしく、風見──遠方から狙撃を行う際、風を読む為にポイント的に設置するもの──すら必要としなかったとか。
そんな彼女には今でも依頼は来るのだが、俺の事を考え引き受けていないのだそうだ。
俺からしたらなんとも複雑な心境ではある。
確かに幼くして両親を亡くした俺にとって、樹さんは最も大事な人だ。
そんな大事な人を命の危険に晒すなど、断固としてお断りなのだが、俺を特訓してくれている樹さんを見て育った為なんとなく分かるんだ。
──彼女はまだ暗殺者として何かをやり残している。
時折見せる表情や仕草がそれを露呈していた。
だから、俺は親父の後を継ぐ事を決めたのかもしれない。
暗殺者になる! と樹さんに言った時、彼女は複雑そうな表情をした。
でもすぐに笑顔になると、今までよりも更に厳しい特訓の日々が始まった。
その時思ったね。
彼女が笑顔の時はとんでもない事の幕開けだと。
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