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その日の夜は、やはりというか何というか……なかなか寝付けないでいた。
布団の上で仰向けになり、古臭い天井を眺める形で渡された資料を片手に取る。
部屋の明かりは点けていなかったが、その夜は俺の気持ちとは裏腹で、綺麗な月明かりが部屋の窓からこれでもか! ってくらいに差し込んできていた。
資料を再度見直す。
「アイリス・ファン・メルベール16歳……メルベール家の一人娘で次期当主。貿易商を営み、フランベージュ家、ヘルツフォーグ家、サイズワン家と共に古くから四大貴族として名高い家系……か」
何度見直しても書いてある事が変わる訳ではない。
資料に添えられていた標的の写真もまた然り。
(怨みを買うような娘には見えないんだよなぁ)
銀髪のロングヘアー、蒼い瞳、晴れ晴れとした笑顔、写真を幾ら見ても普通の女の子としか見えない。
しかし現に依頼は来ている訳だ。
それも受けちまったからには殺(や)らなければならない。
「はぁ~……」
俺は資料と写真をぞんざいに放り投げ、眩しい月明かりから逃げるように俯せになった。
とりあえず明日から学園だ。
寝坊する訳にはいかないので、意識を無にし、出来る限り体を休める事にした。
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