Chapter.1

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 AM09:00。  俺は今、私立彩波学園2―Bの教壇に立っている。  本来ならば俺は一年なのだが、標的であるアイリス・ファン・メルベールが二年な為、一つ歳を誤魔化して転入申請を出していたらしい。  お誂え向きな事に、彼女とも同じクラスときたもんだ。 (一体樹さんはどんな手段を用いたんだ?)  多々疑問は残る所ではあるが、正直、俺はそれどころではなかった。 「ねぇねぇ……彼、瞳が蒼いよ?」 「ほんとだぁ~」 「アイリと同じ国の人かなぁ?」 「でも名前は日本人じゃん?」 「確かに髪も黒いしね~」 「ハーフ?」 「やっば! それやばくない?」  俺とした事がいきなりの失態を犯してしまっていた。  暗殺者とはなるべく目立たないように……というのが鉄則みたいで、クラスの連中が言う様に、俺の瞳は蒼い。  これは母さんからの遺伝らしく、まぁとにかく〝目立つ〟。  普段は黒のカラーコンタクトをしている──樹さんに言われたからだけど──のだが、この日、大事な初日に俺は、あろう事か寝坊してしまった。  これが樹さんに知れたらさぞかし怒鳴り散らされるんだろうな……などと考えながら、 「片桐レン……です」  と、律儀に自己紹介を終えたのだ。
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