Chapter.1

14/33
前へ
/165ページ
次へ
 さてさてどうしたものか。  地味に、目立たず、こっそりと標的の行動パターンや周辺の調査を行う予定だったが、担任はこう言った。 「片桐君は~アイリちゃんの後ろの席に座ってね~」  近すぎるだろ、おい。  しかしここで「いや、ちょっと……」など言ってしまえばそれこそ注目されてしまう。  俺は従順に窓側、後ろから三番目の席に腰掛けた。  もちろん前はアイリス・ファン・メルベール。  彼女はすれ違い様に、ぼんやりとした表情で俺に一瞥をくれると、その後、まるで興味が無いかの如く前へと向き直った。  まぁ興味を持ってもらっては困るのだが、少し、ほんの少しだが寂しく感じた。  それからは普通の授業が始まった。  国語やら数学やら英語やら……。  因みに言うならばこの学園のレベルは非常に高い。  某有名大学へも毎年数多く合格しているとか。  当然ではあるが、俺は産まれてこの方、まともに勉強などしていない。  やってきた事は、殺しのスキルアップを図る訓練のみ。  言わずもがな、進学校の超エリート仕様の授業などについていける訳もなく、ただぼんやりと目の前のアイリス・ファン・メルベールの後ろ姿を眺める事しかしていなかった。
/165ページ

最初のコメントを投稿しよう!

196人が本棚に入れています
本棚に追加