Prologue

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 ──一つの大切な物の為に、命を惜しまない……なんて馬鹿らしいと思わないか?  少なくとも俺はそう思っていた。  何処かの英雄だか、王様に仕える騎士だか、そんな映画や小説に出てくるような奴らなら、それを当たり前のように実行するのだろうが。  生憎、俺は英雄でも騎士でもなく、ましてや映画に出演する予定もなく、小説の主人公にピックアップされるような人間でもない、一般人だ。  いや、俺、片桐(かたぎり)レンは一般人ではなかったな。  英雄達が自らの命を賭けて誰かの命を守る側ならば、俺は自らの命を守り、誰かの命を狩る側だ。  どんな汚い手を使おうと、どんな卑劣な手段を用いようと、最終的にはターゲットの命を奪う殺し屋。  とはいっても、親父がそれを生業としていたというだけで、俺はそれを引き継いだに過ぎない。  でもそれは自ら望んだ事であり、決して無理矢理だとかそういったものではない。  だがしかし、依頼を熟した事がない……これが当時の俺の現状だった。
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