Chapter.1

18/33
前へ
/165ページ
次へ
 彼女の蒼い瞳が真っ直ぐに俺を捕らえる。  吸い込まれそうな程の深く蒼い瞳。  その瞳は俺ではなく別の何かを見ているようにも思えた。 「あ、アイリさん?」  俺の声を聞くと、彼女は軽く微笑み、 「あなたは優しい人なのね」  そう言い席を立った。 「アイリ! 保健室行くの? お弁当まだ残ってるよ?」  麻穂はどこか慌てながら席をフラフラと離れるアイリの腕を掴む。  体調でも悪いのか? と思いはしたが、そんな感じはしない。 「うん、お薬飲まなきゃいけないし……ごめんね、麻穂がせっかく作ってくれたのに」 「そんな事はいいの! 私とレンレンがアイリの食事を邪魔しちゃったんだし」 (おいおい、俺も悪いのかよ)  少々聞き捨てならない言葉ではあったが、どことなく口を挟める雰囲気ではなかった為、俺は麻穂とアイリを交互に見比べながらある事に気付いた。  飯……食べていない。 「と! ゆ~事で! まほはアイリと一緒に保健室へ行ってきます! だからレンレンは一人でお留守番でぇ~っす! お~けぇ~い?」  今から食堂行って間に合うか? いやそもそも食堂の場所知らないし……飯…… 「レンレン!?」 「あ?!」
/165ページ

最初のコメントを投稿しよう!

196人が本棚に入れています
本棚に追加