Chapter.1

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 それから後の事は言うまでもない。  俺は午後の授業中ひたすら空腹を我慢し、結局戻ってくる事がなかったアイリと麻穂を気にかけていた。  アイリが授業にいない事は大して珍しい事ではないのか、クラスの連中も教師も気にしている様子はない。  放課後になったところでその様子は変わる事もなく、当たり前のように各々下校していく。  俺はというと、朝は寝坊で何も食べてなく、昼は昼で機会を逃し、自分の腹がいい加減限界に近かったらしく、フラフラになりながら帰路についた。  帰りしな、近くのコンビニで晩御飯を大量に買い込み、後少し……後少し……と、自分に葛を入れながら家の扉を開けた。 「ただいま……」  家に誰かいる訳でもないのに、無意識でこの言葉は出てくるから不思議だ。  俺の部屋は簡素なもので、布団に座椅子、テーブルと冷蔵庫くらいしかない。  元々が隠れ家の役割だから、そんなに物が必要な訳ではないのだが、やはりどことなく寂しい感じはする。  コンビニで買った弁当をテーブルに置き、冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出すと、そのまま畳へ仰向けに寝転がった。
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