Chapter.1

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 相変わらずの天井。  豪雨でも降ろうものなら楽勝で雨漏りしそうだ。  そんな年季の入った天井を見上げながら今日の事を考える。  アイリス・ファン・メルベール……彼女は何故命を狙われなければならないのか。  少しぼーっとしてはいるものの悪い印象は受けなかった。  それどころか、貴族のご令嬢らしくおしとやかで柔らかい感じだ。  何かしでかしそうなのはどちらかと言えば北川麻穂の方だろう。  しかし彼女はアイリと共に教室からいなくなった事と、弁当などを作ったりしている事を考えれば、非常に重要な人物だ。  となればアイリだけでなく麻穂にも最善の注意を払わなくてはならない。  だけど…… 「友達……なんだよな、きっと……それにアイリと麻穂が言ってた、薬って何の薬だ?」  なんにせよまだ情報が足りない。  情報収集は正直苦手だが、これは俺の依頼だ。  樹さんに頼れば、彼女ならすぐに調べ終えるだろう。  しかしそれではダメだ。  彼女は期待している、と言っていた。  彼女に頼らず自分の力でなんとかする事で、それに応えれると思うし、何よりこの依頼を完遂出来れば、今まで本当の親同然に接してくれていた彼女への親孝行にもなると思う。
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