196人が本棚に入れています
本棚に追加
樹さんは相変わらず騒がしい人だ。
結局は学園について感想を述べただけだったのだが、彼女はそれに対して満足でもしたのかあっさりと帰って行った。
帰り際に、
「一ヶ月といわず一週間以内でキメちゃいなさい」
と、笑顔で言われはしたものの、その時の声が、なんだか元気なくて違和感を感じざるを得なかった。
俺には、もし、どうして樹さんに元気がないのか? と、問われたとしても、それに答える事は出来ないだろう。
彼女は人の心は読むが、決して自分の心の内を人には見せない。
もしかしたら、昔は親父達……仲間には見せていたのかもしれないが、少なくとも俺には見せたりしない。
それは彼女が強くあろうとしてなのか、俺には見せる必要がない、と思っているのか。
どちらにせよ、寂しい事に変わりない。
真っ暗で静かな部屋に一人。
別に問題はない。
樹さんは保護者だと言っても、俺が小さい頃はよく仕事で、当時住んでいた家を空ける事が多かったから。
最初は不安で不安で仕方なかったけど、年月が経つにつれ、そんな不安も感じなくなっていった。
だから一人には慣れている。
慣れているとはいえ、やっぱり少しは寂しいものだが。
最初のコメントを投稿しよう!