Chapter.1

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 AM09:36──  自分でも驚いた。  普通に歩いて二十分くらいの所にある学園に、全速力で走ったとはいえ十分もかからなかったのだ。  しかしまぁ、朝の清々しい気分は何処へやら……ぜぇぜぇと息を切らしながら教室の扉を開けた。  西洋の大聖堂さながらの外観もさる事ながら、校内で迷子になるほど中は複雑な造りになっている。  防犯対策を兼ねているらしいのだが、単なる泥棒はおろか、テロリストだって迷子になりかねない。  生徒には学園の見取り図が入学した際に渡されるほどだ。  俺も昨日の下校時に渡されたのだが、これがまぁなんとも見づらい。  書いてある事はだいたい理解は出来る。食堂は何処にあって保健室は何処で……と。  しかしこの見取り図がまた複雑で、とりあえず自分の教室へのルートを見つけていて良かったと思えた。 「……早く席に座りなさい」 「はい」  教室の扉を開けると、クラスメートは俺に一瞥をくれ、直ぐさまホワイトボードへと視線を戻した。  授業中だから当然といえば当然なのだが、超一流(エリート)というのはどうもいけ好かない。  自分の席へと腰掛け、ふと隣に目をやる。 (麻穂は休みか……?)  あのうるさいピンクブロンド麻穂の姿が無かった。
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