Chapter.1

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 前の席では相変わらず、アイリがぼんやりと授業を受けている。  しかし彼女はえらく余裕のようだ。  他の生徒が必死でノートをとっているのに対して、ぼんやりと教師を見つめ教科書を手でなぞっているだけなのだ。  ちゃんと勉強しないと後で痛い目見るぜお嬢様、などと言いたくなりはしたものの、勉強等ろくにした事のない俺にだけは言われたくないだろう。 (しっかし不思議な子だよなぁ~)  授業が淡々と進んでいく中、俺は昨日と同様に居眠りの準備に取り掛かった。  授業? そんなもの依頼を完遂したらこの学園ともおさらばなんだ。受ける意味がない。  だからとりあえず…… (おやすみなさい)  机に伏して夢の世界へと旅立つんだ。  超一流の進学校に編入してきて、遅刻して、蒼い目をしてて、更には授業中居眠り。  もし俺に関心のあるやつがいたら、奇異な目で見られていただろう。  いや、関心がなくても見られるかな。  しかし……これでは目立ち過ぎのような気がしてならない。  目立たないよう目立たないようにやっているはずが、逆効果なのか?  樹さんに言われたからではなく、マジで早急に依頼を片付けてしまった方が良さそうだ。
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