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だが、この街にはこの教室の高さと同じくらい、また高い建物は沢山あるのだ。
ビル、マンション、アパートなどなど怪しいと思えばどれも怪しく映る。
後は、銃弾の飛んできた方向や角度、ドラグノフの射程を計算すればだいたいの場所は特定出来るのだが、俺は内心、かなり動揺していた。
それがあまりにも聞き慣れた音だったし、あまりにも見慣れた銃弾だったからなのだが、問題は何故そんなに見慣れたり聞き慣れたりしていたか? なんだ。
考えたくはないが、これはきっと樹さんの仕業だ。
彼女は狙撃の名手で、ドラグノフを愛用している。
今回は〝たまたま〟銃弾が逸れたから良かった。
幼い頃から彼女に鍛えられていた俺は、彼女の射撃を何度も見ている。
だから……きっと……
「片桐……くん?」
今まさに命の危険に曝されていたというのに、アイリはほわんとした口調で俺の名を呼ぶ。
俺はそれに応える事もせず、悔しさから歯を食いしばった。
期待しているとか何とか言ってたのに、結局は自らが動いたのかよ。
俺は視線を窓の外から教室内に戻し、銃弾を覗き込んだ。
それと同時に今度は悲しくなり、
「くそっ!」
と、おもわず床を殴りつけていた。
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