Chapter.2

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 俺達生徒は通常午後まである授業を切り上げ、午前中で終了となり、不真面目な生徒──多分俺だけ──にとっては嬉しい事となった。  しかし実際はそんな悠長な事を言っていられない。  俺の予想ではあるが、銃撃を行った犯人が樹さんである以上、その意図を知る必要性がある。  前日まで俺に任せると言っていた彼女が、何故早急に物事を進めようとしたのか? 不測の事態でも起こったのか? など知らなければならない事が多々あるからだ。 『お客様のおかけになった電話は、電波の届かない場所にあるか電源が入っていない為──』 「くそっ……繋がらねぇ」  しかし何度樹さんに連絡を取ろうとしても、携帯から聴こえてくるのはお決まりの機械音。  どうしてだ……樹さん。  そんな風に考え込みながら、校舎を出て帰路についていると、 「片桐くん」  背後からほんわりとした俺を呼ぶ声がした。 「アイリ! ……さん」  いつも通りぼんやりとしてはいるが、どことなく怪訝な表情のアイリス・ファン・メルベールは、「一緒に帰りましょう」と言わんばかりに隣へ並び立った。  そして、やはりというか、北川麻穂は今朝から姿を見せていない。
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