Chapter.2

5/43
前へ
/165ページ
次へ
「ねぇ……アイリさん?」 「はい?」  やっぱりだ。目の焦点が合っていない。  話し掛けられれば大体がその話し掛けてきた相手を見るものだ。  俺はそれを確認する為に、声を掛けた後、少~しだけ退いた。  にも拘わらずだ。彼女の視線は横に並んでいるであろう俺を見る様に、誰もいない場所をいつものぼんやりとした瞳で見据えている。 「どうしたの?」  憶測……いや、確信はある。彼女はきっと…… 「もしかして……目、見えないの?」  少し後ろにいる俺を、ぴくりと肩を震わせながら、アイリはくるっと振り向く。  若干の焦りが見て取れ、俺はアイリス・ファン・メルベールが盲目である事を知った。  二人の間に、また風が吹き抜ける。  アイリは未だに黙ったまま何も話そうとはしない。  隠しておきたかったのか? しかしクラスの連中は少なからず知っているはずだ。それなのにどうして俺にだけ隠していたかったんだ?  最悪……考えうる事は、彼女は俺を疑っているという事だ。  彼女は今日銃撃を受けたというのに、さほど取り乱した様子もなかった。  きっと今回が初めてではないのだろう。  だから転校生である俺を疑っているのか?
/165ページ

最初のコメントを投稿しよう!

196人が本棚に入れています
本棚に追加