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「ねぇ……アイリさん?」
「はい?」
やっぱりだ。目の焦点が合っていない。
話し掛けられれば大体がその話し掛けてきた相手を見るものだ。
俺はそれを確認する為に、声を掛けた後、少~しだけ退いた。
にも拘わらずだ。彼女の視線は横に並んでいるであろう俺を見る様に、誰もいない場所をいつものぼんやりとした瞳で見据えている。
「どうしたの?」
憶測……いや、確信はある。彼女はきっと……
「もしかして……目、見えないの?」
少し後ろにいる俺を、ぴくりと肩を震わせながら、アイリはくるっと振り向く。
若干の焦りが見て取れ、俺はアイリス・ファン・メルベールが盲目である事を知った。
二人の間に、また風が吹き抜ける。
アイリは未だに黙ったまま何も話そうとはしない。
隠しておきたかったのか? しかしクラスの連中は少なからず知っているはずだ。それなのにどうして俺にだけ隠していたかったんだ?
最悪……考えうる事は、彼女は俺を疑っているという事だ。
彼女は今日銃撃を受けたというのに、さほど取り乱した様子もなかった。
きっと今回が初めてではないのだろう。
だから転校生である俺を疑っているのか?
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