Chapter.1

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 特殊な仕事というのが暗殺──つまり俺は暗殺者、殺し屋なのだ。  こんな普通のごくごくありふれた世の中にそんなもの存在するのか?  なんて疑問に思うのだろうけど、実際、本当に存在するのだ。  現に、ここに。  とはいったものの、殺し屋としてはまだまだひよっこで、依頼を一つも受けた事がないという、いわゆる新人(ぺーぺー)というやつだ。  まぁ、ふっつぅーに考えれば殺し屋なぞに依頼など来る事自体がおかしいんだよ。  殺しもなにもない……実に良い事ではないか。  朝、東から昇った太陽が西に沈んでいく様を、日長一日のんびり眺めているのも悪くはないさ。  平和、是一番也。  まぁ親父達が現役の頃は、何かと依頼が多くて、裏では血生臭い殺し合いが繰り広げられていたらしいんだけど。 (もしかして今もなのか? 今も裏では激しい戦いが?)  なんて事を、ぼーっと茶を啜りながら考えていると、コンコンッ……と部屋のドアを軽くノックする、控えめな音が聞こえてきた。
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