Chapter.1

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(あぁもう来たのか)  俺が玄関へわざわざ向かう事もせず、座椅子でまったりと外を眺めながら茶を啜っているのには理由がある。  一つ、ノック音が次第に荒々しい物に変わるから。  ドンッドンッ……ガキッ! バキッ!  ──ほら、さっきの控えめなノック音とは違って、扉が壊れるのではないかと思うくらいに激しい音が玄関から聞こえてくる。 (あれ? 今バキッていわなかったか?)  二つ、この騒音を叩き鳴らしてる張本人は間もなくピッキング技術を駆使し、不法侵入をしてくるはずだ。  カチャ……カチャカチャカチャ……  ──やっぱりな、何やら音がしだした。  三つ、迷惑極まりないこの来訪者は……  ガチャッ! バンッ! 「レン! お姉様がわざわざノックしてるんだから優しくお出迎えくらいしなさいよ!」  俺の後見人兼保護者兼仲介人、東雲樹だ。  見た目は、長くて綺麗な黒髪が彼女の大和撫子的な雰囲気に合い、絶世の美女ではないが目鼻立ちのしっかりした綺麗な顔立ちをして、大人しくて清楚な感じがするのだが、そんな見た目とは裏腹な性格で、面倒臭がりアンド大雑把アーンド暴力的……しかも、一流の暗殺者なのである。
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