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…ショックだった。
リーダーを、メンバーを信頼して最高の仲間だと思って今までやってきた。だからスカンクの異常に厳しい練習も乗り越えられてきたのに。「いらない」なんて言われたらもうそれ以上何も言えなくて、バンドでは私情を挟まず克己ともメンバーとしてやってきたのに「どうせ克己の…」という台詞に涙が零れる。
練習スタジオからは他のバンドがまるで見世物の様にこちらを眺めている。頑張ってやってきた、ただ考えが少し違っただけなのに。このままじゃメンバーがバラバラになる、そんなの耐えられない、でもどうしたら良いかもう分からなくて…
「リーダー…いくら頭にキテても言って良い事と悪い事があるだろう…ミズに、ミズに謝れよ!」
桐谷は私に駆け寄り、今にも崩れ落ちそうな私の身体を支えてくれた。私の肩を掴む桐谷の手が怒りに震えている。
「ミズは一度だって私情挟んだ事なんてねぇよ、克己だってミズに対して甘い顔してたか?むしろ2人でいてもバンドの話ばっかだったし、克己はミズに一番厳しかった。こんなにスカンクの事考えてる奴等いねぇよ!」
「うるせぇ!俺が作ったバンドだ、俺がいらねぇっつったらいらねぇんだよ。克己もミズも桐谷も…クビだ、クビ!」
「リーダー!!」
アキちゃんがリーダーの腕を掴む。その腕もまた、怒りで震えている様にみえた。
「アキ、お前もだ。プロ目指す気がねぇなら今すぐ消えろ!」
リーダーが罵声を飛ばしながらスタジオに戻っていく。アキちゃんが追い掛ける中、私は溢れ出す涙を堪える事が出来ない。遂には夜の冷たいアスファルトの上に座り込むように崩れ落ちた。桐谷が支えてくれているけど頭の中は真っ白…視界は涙でボヤけるばかりで、遠ざかるリーダーの背中が小さくなっていく。
克己は頭に血が上ったまま車に乗り込み、桐谷が必死に呼びかけても「うるせぇ!」と怒鳴りつけて勢い良く車を走らせて行った…
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