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「ミズちゃん?あれ、桐谷?」
聞き覚えのある声がして視線を上げる。サワちゃんがなんでここに?そういえば[明日スタジオ練習なんだよ]って昨夜電話で話したっけ…
「どうした?なんかあったの?なんか凄い騒ぎになってるだけど…」
桐谷に支えられて涙を流し続ける私の目の前に、膝を着いて心配そうに覗き込んでくるサワちゃんの姿が見える。
「2人ともどうしたよ、桐谷が見えたから来ちゃったけど。ってかミズちゃん泣いてる?」
「悪い、ちょっとバンドでモメてさ。ミズの事頼んで良い?こいつ今軽くパニックなんだけど、俺やらなきゃいけない事あって。」
「あぁ、まぁそれは良いけど。っつか桐谷なんか顔色悪いな、平気?」
さっきから桐谷の手に力が入りっ放しで少し痛い。この状況に戸惑っているのは何も私だけじゃない。それなのに私は…情けなく思っても今はここから動ける気がしない。
「俺は良いからミズの事頼むわ、アキとリーダーん所行きたいんだ。スタジオにも迷惑掛けちゃったし、暫く落ち着くまでミズ見てて欲しいんだけど…サワちゃん時間ある?」
「俺は暇つぶしにスタジオ遊び来ただけだから。じゃあ俺の車に連れてくわ、桐谷も後で。」
「悪いな!…ミズ、少し車ん中で休んでろ、お前の荷物も持ってきてやっから。」
そういって頭を乱暴に撫でた桐谷は「じゃな!」とスタジオへ戻っていった。ごめん桐谷、何にも出来なくてごめん…。
「ミズちゃん身体温めよう?凄い冷えてるし、このままじゃ風邪引いちゃうから。立てる?」
「うん…」
本当は脚に力なんて入らなかった、心は私も追い掛けたい。克己にも連絡しなきゃ、冷静に話し合うように言わなきゃ、考えだけが先走って身体が言う事を聞かない。そんな私をサワちゃんはゆっくりと引き上げて、支えながら車まで歩いてくれた。
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