出逢い

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 通い慣れたライヴハウス。薄暗い空間に重低音が響き、心地良い振動が身体を包む。幅広い年齢層が集まるこの場所で、その夜一人の男性と出逢った―――――  私の名前は松本 瑞恵(21)。幼い頃から家族全員が音楽好きという環境で育ち、小学生の頃始めたドラムに夢中になった。現在はロックバンド『スカンク』で紅一点ドラムを担当している。今夜はスカンクのベース担当、桐谷 正也(32)が掛け持ちしているハードロックバンド『DD BROW』の演奏を聴きにこのライヴハウスにやって来た。  桐谷とは一回り近く歳が離れているけれど、最初から妙にウマが合った。物凄く仲は良いけれど決して男女の関係にならない貴重な存在。仕事が忙しくてなかなかDD BROWを観る事が出来なかった私も、今夜やっとライヴを観る事が出来ると楽しみにしていた。 「お疲れ!ギリギリかと思ったけど割と余裕だね。」 「おー、ミズ来てたんか。サンキュッサンキュッ、今メンバー紹介してやるわ。」 「マジ?それならドラマーさんと仲良くなりたい!」 「サワちゃんは…ちょっと待ってろ、今連れてくる。」 「あー緊張する…一目惚れされちゃったらどうしよう!へへへ!」 「大丈夫、お前自分が思ってるより全然可愛くないから。」 「・・・ちっ!」  桐谷はイケメン。死語だけど本当にイケメン。いくら同じバンドのメンバーでも、2人きりでいるとファンから鋭い目で見られてしまう程人気のある桐谷。  よく「2人は付き合ってるんですか?」ってファンの子に怖い顔して聞かれるけど…生憎2人はお互いを恋愛対象としては意識していない。例えるなら兄妹。血の繋がらない兄弟みたいな存在だと思ってくれれば良い。
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