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DDのライヴを観たあの日から、サワちゃんとは電話やメールのやり取りを何度かしていた。初めはドラムについて相談し合っていたけど、そのうち仕事について、恋愛の相談まで話は尽きなかった。サワちゃんの愚痴を聞く様になって、最近では酔っ払った時必ずと言って良いほど、時間を問わず私の携帯へ電話が掛かって来たりしている。迷惑だなんて思わなかったし、なんでも話せるお兄ちゃんが出来たみたいで嬉しかった。
克己も、私達が仲良くしている事は知っていたけれど、ここ暫くスカンクの話題になると怒りっぽい克己とギクシャクしていて、お互いがお互いに干渉しないのが暗黙のルールとなっていて━━━━━
時は過ぎ、克己と付き合い出して2年になろうとしたそんな頃、バンド練習中にスカンクのリーダーと克己の意見が分かれ、他のメンバーをも交えての口論へと発展した。
リーダーはプロを目指すならライヴのステージングにも力を入れるべきだと言い、克己はプロは目指さないからもっと本当に演りたい事を突き詰めたいと言う。双方の気持ちが分かる私は、結局どちらにつく訳でもなく2人の間を行ったり来たり。そんな中、痺れを切らした桐谷がリーダーと克己を2人まとめてスタジオから連れ出した。
「お前等いい加減にしろよ!ミーティングでみんな交えてすりゃ良い事だろが!決まった時間で練習する今は、まず練習に集中しろよ!」
克己は少しバカにした様子でフンと鼻で笑う。頭にきている時の克己の悪い癖が出たと思い、私はすぐに克己の元へ駆け寄ったが遅かった。
「桐谷さ、みんなにも、悪いとは思うけど。音楽演る上で一番大切なのがステージングか?笑わせんなよ。必死に音作ってる奴をバカにしやがって、そういう事は完璧に演奏出来てから言えよ。リーダーが考えを変えない限り俺ギター弾かんから。」
「克己!何言ってんだよ!」
「そうだよ克己、ちょっと冷静になろうよ…!」
遅かった、カーッとなった克己は誰にも止められない。私が何を言っても聞かない、言いたい事を言って喧嘩を売るしか出来ない不器用な人。
「俺だってなぁ!」
リーダーが口を開く。
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