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「俺だってプロになる夢も度胸もない奴なんて…そんなに言うなら抜けてもらって構わない!偉そうに音、音って同じ事ばっか繰り返しやがって…それっぽい事言いながら結局はプロ目指す自信がねぇだけじゃねぇか!」
リーダーが怒りを剥き出しにした姿を初めて見た。顔も耳も真っ赤にして、よく見ると握った手から血が出ている。克己もリーダーも言い過ぎだと思いながら、みんな一生懸命なのは変わらないのに…と苦しくなる。
「リーダー!そんな言い方ねぇだろ!」
声を荒げたのはリードギターのアキちゃんだった。彼は克己の高校時代からの友達で、私よりも克己を知っている頼れる存在。でも、だからこそ今の克己がもう止められない事を分かっているはず。そして克己に吐いたリーダーの台詞に対し、克己以上に怒りを覚えているのもアキちゃんだ。
「克己は…克己は俺が昔っから尊敬してる唯一のギタリストだよ、こんなセンスある奴この辺じゃ絶対いない!ステージじゃ目立たないかもしれないけど、今のスカンクを支えてるのは間違いなく克己のギターであってアレンジだ。メンバー誰一人欠けてもスカンクじゃなくなる、リーダーなのにそんな事もわかんねぇのかよ!」
「そうだよ…アキちゃんの言う通りだよ。だからリーダーも落ち着こう?克己も、ミーティングで全員で話そうよ、ね?」
堪え切れずに私も言葉を放つ。喧嘩腰で口論する中に飛び込むのは流石に怖かったけど、大切なバンドが壊れていくのを黙って見ていられない。
「2人の言い分はよく分かるし、メンバーみんなで向かい合わなきゃいけない課題でしょ。私だってステージングは考えなかったって言えば嘘になるもん、でもアレンジだったり音だったりを疎かになんて絶対にしたくない。ただこんな風に喧嘩するだけじゃ何にもならないでしょ?今度ちゃんとミーティングの機会を…」
リーダーと目が合った。
「ミズ黙ってろ!どうせ克己の味方すんだろ?お前等口裏合わせて来てんだろ?…ミズ、お前もいらねぇ。さっさと帰れ!」
それは、リーダーを信じて一緒に頑張ってきた私を粉々にするには、充分過ぎるほどの暴言だった。
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