それぞれの人生

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大学3年の夏 いつもと変わらず 学校帰りに未来の家に行き 一緒にご飯を食べて ドラマを見ていた。 しかし未来はいつもと どこか様子が違い 口数が少なく 会話が続かない。 『どうかした? 今日の未来いつもと違わない?』 椅子に座ってうつむき加減の 未来に向かって 洗い物をしながら 聞いてみた。 未来は少し間を置いたあと 『俺たち 別れた方がいいと思う。』 とだけ切り出した。 咲弥には別れる理由が わからなかったし 冗談かとも思った。 些細なことで喧嘩をすることも たまにはあったが お互い悪い所は認め すぐ仲直りができていた。 『なんで?何かの冗談?』 洗い物を止め 笑いながら未来と 向き合うように 椅子に座った。 『冗談なんかで言うか。 もぅ無理やねん。』 東京に来ても 関西弁を直さないのは 私も一緒だった。 その言葉を最後に 未来は私が何を聞いても 答えてくれなかった。 突然のことで私も 整理出来てないし これ以上何を言っても 無理だと思った私は 今日は帰ることにした。 『わかった。今日は帰るね。』 私は玄関を出て 1階へ降りた。 未来は後から出てきた。 『いいよ。一人で帰れる。』 未来の家は大学の近くで 私の家は自転車で 15分くらいの所にあったが いつも未来がバイクで 朝は迎えに来てくれて 一緒に学校に行って 夜も送ってくれてた。 『乗ってけ。』 ぶっきらぼうに言って エンジンをかけた。 私は少し戸惑ったが 何かが変わるかもと思い いつものように後ろに乗った。 夜の12時だったので 交通量も少なく すぐに家に着いた。 いつもはバイクから未来も 降りてくれるが 今日は私だけ降りた。 無言が1分くらい続いた。 私も何と言っていいか わからず黙ってしまった。 『ぢゃぁまたな。 今までありがとう。 元気でな。』 言葉が少し震えてた。 私も涙が自然と流れた。 『またね。 私、待ってるから。』 また未来が 戻ってきてくれるのを信じて… 信じたくてそぅ言った。 未来は何も言わず エンジンをかけ バイクで走りだした。 私は涙が溢れた。 涙でぼやけた視界には いつものように 右手を挙げた未来が 映っていた。 これが未来を見た 最後だった…
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