あれから

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母親に迷惑をかけるわけには いかないと思ったのだろう。 そんな素振りはせず 『修学旅行なんてダリぃ。 行かねぇよ』 と言った。 私は彼の気持ちをくんだ。 しかし一つ約束をした。 これが瀬戸未来とした 最初で最後の約束だった。 職員室を出ようとする彼に 『お前が大人になったら 修学旅行に行こう。 一緒に酒を飲んで お風呂に入って…』 瀬戸は 『アホか。誰があんたと 一緒に風呂入るか。』 と言ってピシャッと 扉を閉めたが その顔には笑顔が こぼれていた。 卒業式の日 『お世話になりました! このご恩は一生忘れねぇ! 3年B組瀬戸未来』 と校門にスプレーで書き込み 中学校を去っていった。 私には彼の感謝の気持ちが とても伝わり校門で わんわん号泣した。 その後彼は私が勧めた 高校に進学したが 見た目がワルの瀬戸のことを 先生達は軽蔑し 不良のレッテルを 貼っていたらしい。 一人の先生が瀬戸と 同じクラスの女生徒にセクハラし それを見た瀬戸は その女生徒を守るため 先生を殴った。 先生は転勤させられ、 殴った瀬戸も 退学処分となった。 学校もお荷物を 置いときたくはなかったのだ。 その話は 瀬戸と同じ高校に進んだ 女の子が中学校に 遊びに来た時に 教えてくれた。 すぐ私は 瀬戸の家に行ったが そのアパートには 別の人が住んでいた。 卒業式以来 瀬戸とは連絡が取れず 次に瀬戸と会ったのは あの日だった。
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