Ⅰ.瑠璃の章

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それを後押しするように村人から次々と声が上がった。 「ばばさまを連れて行かないでください!」 「そのお方は薬草で病気を治してくださるんだ!」 ばばさまがいなくなったら困るんだ! しかしシド・フォーンはその訴えを一笑に付したのだった。 その場にいたものは皆、冷酷無比と言われる彼の、そのような姿を見たような気がしていた。 「さあ、参りましょう。共に世界を救うために」 シドはそう言ってナイルターシャの手を引いて行こうとしている。 マトが飛び出した。 その脇を別の影が走る。 そしてナイルターシャを守るように、彼女とシドの間に割って入った。 「待って!世界を救うのは、わたしの役目よっ!」 シドはその漆黒の瞳を瞬かせたものの、すぐに合点がいったようにナイルターシャを離した。 「大丈夫ですか?」 老女を支えると、 「どうして来たのです?」 と、まるで助けたことわ責めるように言ったのだった。 「なぜって、助けたかったからです」 「あなたにはあなたの役目が……」 ナイルターシャはそう言って、瑠璃の石の指輪を撫でた。 「世界を救うのがわたしの役目なら、ひとりを助けるのも役目です」 そして出来ることなら、戦火におびえる人すべてを助けたい。 「……」 蘭の言葉を聞きながら、ナイルターシャは無言で指輪を撫で続けている。 否定も、肯定もなかった。 (わたしの考え、間違ってる?) .
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