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「お前が、『瑠璃の巫女』か!」
シドに二の腕を掴まれた。
「キャッ!」
「ランっ!」
マトがシドに殴り掛かろうとした。
その途端銃口がマトに向けられた。
「だめ!打たないで!」
「お前が我々と共に来るなら、村人全員解放してやる。無論そこの老婆もだ」
シド・フォーンの見下した言い方に、頭に血が上ったが、それをぐっと抑えて蘭は頷く。
「行くよ。だから、みんなをこれ以上傷付けないで」
「いいだろう」
満足げに頷くと、シド・フォーンは周りを取り囲む兵士を見回しながら撤退を命じた。
その声を受け、兵達が一斉に動き始める。
「絶対、村の人達に危害を加えないでね」
冷酷な彼に、そんな約束がきくのか不安に思いながら、もう一度念を押した。
「約束しよう。目的は果たした」
シドはそう言って、蘭の手を引きながら歩き始めた。
「ランっ!」
マトに首を振って答える。
蘭がシド・フォーンと行けば、村人は助かる。
それを十分に分かっているからこそ、マトは歯がみしたい思いでいた。
(俺に力があったなら!力が欲しい。誰も傷付かないで済むくらいの、強い力が!)
そんな彼を嘲笑うように、シドは蘭を連れて行ってしまった。
足許で、老婆がよろめく。
「ばあちゃんっ!」
慌てて支えると、思いの外力強く手を握られた。
「私を岩場に連れて行っておくれ。倒れてしまう前に……」
めったに自らはそんなこと言わない。
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