月日が経って…

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正太郎さんがいなくなって間もなくの事。 春を迎えるより先に、私たちの町にも空襲警報が鳴り響くようになった。 私たちは毎日のように防空壕に逃げた。 逃げては怯え、その度に正太郎さんや父さんを思った。 そんな日々を過ごしたある日。 お婆様が言った。 「二人とも…この町はもう危ない。息子や正太郎くんの事も気になるけど…この町から逃げよう?」 「えっ!?」 母さんは黙って頷いたけど、私はそうもいかなかった。 「駄目だよ…私、正太郎さんと約束したの。あの桜の下で会おうって。だから、次の春まで待って。正太郎さん必ず帰って…」 「櫻…気持ちはわかるけど…もしこの町に残って櫻が死んだら、正太郎さんは戻る場所を無くすでしょ?」 母さんの言葉に、ドキッとした。 死ぬ…この町も危ないんだよね… あまりにも実感がないけど、現状は母さんやお婆様の言う通りだった。 母さんは続ける。 「私も父さんの事はすごく心配です。でも…私が待っていないと、あの人を迎える人がいないから。私は…私たちは、生きなきゃいけないんですよ」 「そうだよ、櫻。…安全な町で、正太郎くんを待とう」 お婆様にも言われ、私は下を向いた。 そして…小さく頷いた。 ラジオは今でも、日本の優勢を伝え続けている。
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