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それからの日々は、季節がわからないほど必死に生きた。
まだ戦火の被害のない、遠い、見ず知らずの土地に来て、私たちは毎日を過ごした。
ただ…肌に感じた、春の風。
私は桜を思い出し、思い出しては正太郎さんを想った。
正太郎さんは帰ってきただろうか?
桜の下で待っているのだろうか?
ごめんね…約束の場所に行けなくて。
ごめんね、正太郎さん…
何度も心の中で謝りながら、でもどこかで、まだ帰ってない事を悟っていた。
そうして月日は流れ、気付けば戦争は終わっていた。
終戦の日。
ラジオはようやく、日本の敗北を告げる。
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