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終戦から数ヵ月後、父さんの戦死を知らせる手紙が、疎開先に届いた。
母さんは泣き崩れたが、「お国の為」なんて、似合わない台詞を繰り返していた。
お婆様は何度も何度も日本を批判したけど、何か状況が変わるわけでもない。
しばらくして、二人とも父さんの死を受け入れた。
私は二人を尊敬した。
愛していた人の死を、こんなにすぐ受け入れられるものなの?
自分の夫が、自分の息子が、この世からいなくなったというのに…
私は一人、父さんの死を認められずにいた。
それと同時に、正太郎さんはきっと生きている、と自分に言い聞かせた。
実際、正太郎さんの死を告げる手紙みたいなものは届いていない。
外には雪が舞っている。
桜の季節はもうすぐ。
…会いに行こう…
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