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私は辺りを見回しながら、ふと後ろを振り返った。
「あっ…」
桜の事で頭いっぱいだったけど…
そこにある瓦礫は、間違いなく私の家だった。
見慣れた屋根の色。
瓦礫の下に見える使い慣れたタンスや、お気に入りだった椅子。
「…壊れちゃった…全部…」
私はその場にしゃがみこんだ。
自然と溢れる涙。
戦争って…なんて残酷なんだろ…
私はしばらく呆然と涙を流していたが、やがて立ち上がった。
そして瓦礫を少しずつどかした。
「このくらいでいいかな…」
お婆様の布団と私の布団を引きずりだし、桜の木の下にしいた。
「これで正太郎さんを待てる。正太郎さんがいつ来ても、寒さをしのげる」
私はもう一度周囲を見渡した。
来るよね…正太郎さん…
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