13人が本棚に入れています
本棚に追加
痛覚もある。その上批判されている。姿の見えぬ何者かは、彼の都合の良い幻覚、というわけでもなさそうだ。
何やら軽蔑したような目で見られているらしい彼は、ばつが悪そうに叫んだ…のち、静かになった。そして、拗ねているのか唇を尖らせながら紙袋を抱え直し、再び歩みを進めはじめた。
しかし2・3歩進んだところでまた立ち止まる。だが今度は妄想ではないようだ。その証拠に、アーサーは悪戯を思い付いた子供のような表情で、先程から話していた相手の方を仰いでいた。
「そうだ!このまま真っ直ぐ会場に向かったって面白くねーから、アイツん家に寄ってアイツを誘って行けばいいじゃねーか!っぁあどどどーせアイツのことだ、慣れない文化にもたもたしてるだろーからな!こっ、ここは主催である俺がエスコートしてやんねーとな!べべべ別に仕方なくだ!勘違いすんな!」
会場は彼の自宅ではなく別の場所にあり、彼は先程からそこへ向かおうとしていたらしい。
しかし彼は目的地を変更、このパーティーのために自分の国へ来てくれている、漆黒の青年の泊まるホテルへと足を進めるのだった。
最初のコメントを投稿しよう!