いのち

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  学校へ行く途中で後ろから声を掛けられた。 「おはよう、詩織!」 クラスメートの鞠戸(まりこ)だった。 名前のようだが名字である。 ちなみに下の名前は由美。 『名前もまりこだったら面白いのに』と周りからいわれているが、そんな親はいないだろう。 しかし超が付くほどの天然である鞠戸母ならやりかねないとも思ってしまう。 そんな母親を持つ鞠戸は所謂親友というのか、とにかく仲が良い。 通学途中で会うこともよくあり、こいつはそれを『運命だよっ』と言う。 それぐらいで?と私が笑うと、『ひどーい!』と言ってふくれた。 私達は性格も価値観も全く違うのに、馬が合うのが不思議だっだ。 毎日鞠戸のボケに私がつっこんで二人で笑い合う。 日常は平和だった。 学校に着いて朝のHRが終わると、鞠戸が私の席まで来て、 「短縮日課だったんだね~。忘れてたぁ。今日も一緒帰ろーね!」 と笑顔で言った。 大抵いつも一緒に帰っているのにわざわざ言いに来るのは、相談か報告か何かがある時だ。 今日は、というよりいつもだが、特に予定は無かったので私も笑顔でそれに答えた。 そしていつもと同じようにチャイムが鳴って授業が始まる。 授業の大半は寝て過ごすが、たまに鞠戸の方を見ても特別変わった様子は無かったので、私は気楽に放課後を待った。  
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