いのち

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  帰りのHRが終わると私達はまっすぐ下駄箱へ向かった。 学校から最寄りの駅までは歩いて20分程ある。 その間に私は鞠戸が何かを話すのを待っていた。 しかし彼女は、今日の小林先生が面白かったとか、B組の安藤がカラスに追いかけられたとか、そういう話しかしなかった。 私が深読みしすぎたのかと思って一瞬気が抜けたが、ふといつもと調子が違うことに気付いた。 間がおかしい。 いつもは尽きることなく鞠戸の口から話題が飛び出してきて、タイミングを逃すと私がほとんど話せないほどなのに、今は妙な間がある。 何を話そうか考えているような、あるいは何かを話すことを躊躇っているような、そんな間だ。 駅に近付くにつれてそれは顕著にあらわれた。 が、結局何も無いまま駅に着いた。 私たちは同じホームの逆方向の電車に乗るので、一緒にホームへの階段を下った。 『まもなく1番線に電車が参ります…』 1番線は私が乗る方の電車だ。 「あ、詩織の電車来るね」 鞠戸が言った。  
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